前回記事は以下から。
脳は「情報」を認識する
以前にも書きましたが、人の脳は目の前の現実とリアルにイメージしたものとを区別することができません。
というのも、脳が認識するのは「情報」だからです。
そう言われてもすぐには理解できないかも知れませんので、ごく簡単に説明しておきましょう。
今あなたの目の前にスマホがあるとしましょう、そのスマホが発する光が目に映るとそこで電気信号に変換され、それが脳に伝わるんですね。
そんなふうにして、あなたは目の前にスマホがあると認識しています。
これは視覚に限らず聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感全てにおいて同じです。
ちなみに、この情報をキャッチする感覚器官のことをモーダルチャンネルといいます。
それに対してイメージというのは、記憶の貯蔵庫みたいなところがあってそこから電気信号として出てきた情報です。
脳は、モーダルチャンネルから入ってきた情報と記憶の貯蔵庫から出てきた情報とを判別できないんです。
なので、どちらに対しても同じように反応を示すというわけです。
イメージすることによって起きる身体的変化
人の脳は目の前の現実とリアルにイメージしたものとを区別することができないので、なりたい自分の姿をリアルにイメージしたら脳はそれを現実と思い込み、そのイメージにふさわしい自分に変わっていくと言いました。
でも、それに対してまだ半信半疑の人もいるかも知れませんね。
なので、その科学的根拠を示しておきましょう。
以前にも紹介した、「あなたはプラシーボ 思考を物質に変える」からの引用です。
ハーバード大学の研究では、ピアノをまったく弾いたことがない被験者が、一日二時間、週五日、簡単な五本指のピアノ曲をイメージの中だけで、指一本動かすことなくメンタル・リハーサルした結果、同じ条件でピアノを実際に弾いて練習した被験者とまったく同じ脳内変化が起きた。脳内の指の動きをつかさどる部分が劇的に密度を増し、それはあたかも、実際にピアノを弾いて練習をした結果のようだった。被験者は神経的ハードウェア(神経回路)とソフトウェア(プログラム)をインストールし、思考のみにより新しい脳内マップを出現させたのだ。
「あなたはプラシーボ 思考を物質に変える」 OEJ Books刊 P.197より
こんなふうに、イメージするだけで脳内に新たな神経回路ができるんですね。
これがイメージトレーニングをすることの意味で、それは決してスピリチュアルみたいな胡散臭(うさんくさ)いものとは違います。
この例から、脳はリアルにイメージしたものを現実と認識するということが、あなたにも理解してもらえるんじゃないですかね。
ここでもう一つ、あなたにとって耳寄りな情報をお届けしましょう。
これと似たような実験で、十名の被験者が週5回、片方の上腕二頭筋を可能な限り鍛えるエクササイズを行うことを脳内でイメージするというものがあった。研究者はセッション中の被験者の脳内の電気活動の測定と、二週間に一度の筋力測定を行った。ほんの数週間想像上のエクササイズをしただけなのに、上腕二頭筋の強度は13.5%増加した。しかもこのメンタル・エクササイズをやめてから三か月後に再び測定したところ、筋肉の強度は維持されていた。彼らの体は新しい意識に反応したということだ。
「あなたはプラシーボ 思考を物質に変える」 OEJ Books刊 P.198より
筋トレもイメージするだけで効果があるんですね、ここでピンときたかも知れませんが、これはダイエットにも応用可能ですよ。
ちなみに、ボクは「ダイエット」という考え方が嫌いで、クライアントさんには基本的にダイエットをお勧めしていません。
どうしてかというと、一年365日理想の体型でいたらダイエットは必要ないからですね。
そしてそれは、自己イメージを変えることで実現できます。
なので、ボクはその自己イメージを変えるためのお手伝いをしてるんですよね。
さて、なりたい自分の姿をリアルにイメージしたら脳はそれを現実と思い込み、そのイメージにふさわしい自分に変わっていくということが、これで理解してもらえたでしょうか?
リアルにイメージしたことを現実と認識するということは
さて、人の脳がリアルにイメージしたことを現実と認識するんだとしたら、一つ気を付けなければならないことがあります。
それは、失敗や嫌な記憶を思い出してはいけないということです。
これはもう分かりますよね、失敗の記憶を思い出せばそれは実際に失敗したのと同じだからです。
つまり、100回思い出せば100回失敗したのと同じってことですね。
そう考えたら怖くないですか?メンタルへのダメージも想像以上に大きいことが分かると思います。
あなたも歌やダンスを何度も反復すると思いますけど、それは記憶を強化するためですよね。
記憶をつかさどる脳の海馬という器官は、頻繁に入ってくる情報を重要と認識して長期記憶として定着させます。
なので、何度も失敗を思い出せばそれだけ記憶も強化されていくわけですね。
そして、それが自己イメージになってしまうと、それだけ失敗もしやすくなってしまうんです。
何故なら、イメージするだけで脳内に新たな神経回路ができてしまうからですね。
携帯電話が普及する前には、ビジネスパーソンは取引先の電話番号を暗記していて、100件以上覚えているという人も珍しくありませんでした。
それは、頻繁に電話しているうちに自然と覚えてしまったんですね。
ボクも数十件ですが以前は覚えていましたよ、今はもう忘れてしまいましたが。
それは、記憶というのは30日思い出さないとほぼ完全に忘れてしまうからです。
ということで、失敗をしてしまった時にはその後に思い出さないことが重要です。
といっても、ただ忘れればいいというわけではなくて、同じ失敗を繰り返さないためにも反省は必要なんですよね。
ではどうするのかというと、その時どうすればよかったのかを考えることです。
それは成功のイメージを作ることになるんですよね、これなら次に同じ失敗をする可能性は低くなります。
つまり、失敗のイメージを成功のイメージに書き換えるってことですね。
このことは、グループ内でミスを指摘する際にも重要になってきます。
他のメンバーのミスを指摘する時には、そのミスを今後に引きずらせない(思い出させない)ことを第一に考えてあげてくださいね。
「今ここがこうなってたから、こういうふうにしたほうがいいよ」とか、イメージを修正させるような言い方をしたほうがいいでしょう。
思い出さないためにはどうすればいいのか
失敗をしてしまった時にはその後に思い出さないこと、これは言うのは簡単ですが実行するとなると意外と難しいんですよね。
何故なら、失敗を思い出すというのは無意識の働きだからです。
そもそもどうして失敗を思い出すのか、思い出しやすいのかというと、それは「死なない(生き延びる)ため」です。
人がまだ野生で生きていた頃、失敗は死に直結するリスクでした。
いつ外敵が襲ってくるか分からないという状況の中では、ちょっとしたミスが命取りにもなりかねません。
なので、脳は同じ失敗を繰り返さないためにそれを記憶するようになっているというわけです。
例えば、あなたがある会場でミスをしたとすると、再びそこを訪れた際にその記憶がよみがえってきたりします。
これは、同じミスをさせないための脳からの警告なんですよね。
でも、その時ミスのイメージを膨らませてしまうと同じミスをすることになります。
なので、ミスのイメージが浮かんできたら一旦冷静になって、それを成功のイメージに切り替えるようにします。
人の優れているところは、意識を介入させることによって無意識の働きをコントロールできるところです。
簡単に言うと、「気をつける」ということですね。
ここであなたは拍子抜けしてしまったかも知れませんが、残念ながらこれ以外に方法はないんです。
でも安心してください、この先それを一生続けろということではありませんから。
たとえどんなに大変なことであっても、人は続けていくうちに必ず慣れてきます。
例えば、刑務所なんてあなたも絶対に入りたくないと思いますよね?
そんな嫌な場所であっても、毎日いたら慣れてくるんですよ、これが。
長らく刑務所にいた人が出所した後に、新しい生活に馴染めずに再び罪を犯して刑務所に戻っていくというケースが実際にあるそうです。
そんなふうに、人は良くも悪くも慣れる生き物なんですよね。
そして、いざ慣れてしまうと今度はやめることのほうが難しくなります。
ということで、結論としては「慣れるまで繰り返しましょう」です。
大丈夫、遅かれ早かれ必ず慣れてあなたにもそれができるようになります。
慣れるまでにはどうすればいいのか
さて、あとは慣れるまでが問題ですよね、慣れるまでにはどうすればいいでしょうか?
これには一つコツがあります、それは「正確な評価をすること」です。
どういうことかというと、挫折する人は間違った評価をしてしまっているんですよね。
例えば、ダイエットのために間食をやめると決めたとしましょう。
その日から3日間は我慢できたけど、4日目に間食してしまったという場合。
ここで多くの人は、「あぁ、3日間しかもたなかった、私って根性ないな・・・」って考えてしまいます。
でもちょっと待ってください、3日間しかもたなかったという評価に対して、3日間は我慢できたという評価だってできるはずですよね。
事実としては、単に「初日から3日間は間食しなかった、4日目に一度間食した」です。
それを、「3日間しかもたなかった」といって、できなかったことに目を向けてしまうんですね。
ちょっと考えてみてください、ダイエットを始める前には毎日間食をしていたわけです。
それが、4日のうち3日を間食しなかったということは、75%も間食を減らせていますよね?
それって大進歩じゃないですか、どうしてわざわざ悲観的な評価をするんですか?おかしいですよね。
そんなふうに考えることができれば、「ここから6日間食しなければ、90%減らしたことになるじゃん!」って前向きになれるはずです。
言いたいのは、できなかったことではなくできたことに目を向けて、それをちゃんと評価しましょうってことですね。
まとめ
今回は失敗への対処法として記事を書いていますが、この考え方は新しいことを始める際にはすべて共通です。
42,195キロを走るマラソンランナーだって、はじめからそんな距離を走れたわけではありません。
だから、少しずつ自分のペースで進歩していけばいいんです、そうすればやがて必ず目指すところまでたどり着けますよ。
大丈夫、続けていけばあなたの夢は必ず叶います。
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